2013年10月27日日曜日

Ashio Projectの為のノート2 田中正造の3つの小石。

少々前の話になるが、9月7日に田中正造の遺品を、佐野市郷土博物館で見た。今から100年前の9月4日に田中正造は亡くなった。支援者を訪ね歩く旅の途上で正造は倒れる。病床の枕辺には菅笠と信玄袋。袋の中には大日本帝国憲法とマタイ伝の合本。福音書。日記。ちり紙。川海苔。河川調査の草稿。そして小石が3つ。憲法や聖書はわかるのだが3つの小石をなぜ持っていたのか。遺品については評伝で読んだことがあるのだが、その時も3つの小石の事が気になった。官兵や、正造と敵対する陣営と闘争状態になった時の護身用で、投擲するものかと思ったりもした。

博物館のキャプションで真相を知る。私財をなげうって、足尾鉱毒問題に取り組んでいた正造の晩年は大変貧しかった。そんな正造のささやかな楽しみは出かけた先で見つけて気になった路傍の小石を拾うこと。そして彼は、彼の支援者に一宿一飯の返礼として、書をしたためその小石をそえて渡していたのだそうだ。

正造の日記にこういう記述がある。

正月九日 うつの宮ニ来泊す。思うニ予正造が道路ニ小石を拾うハ、日なる小石の人ニ蹴られ車ニ砕かるるを忍びざればなり。海浜に小石の日なるを拾ふハ、まさつ自然の成功をたのしみてなり。人の心凡此くの如シ。我亦人と同じ。只人ハ見て拾わず、我ハ之を拾ふのみ、衆人の中ニハ見もせずして踏蹴る行くもの多し。
田中正造全集十三巻384頁 日記 大正2年(1913)1月

正造は小石に、大地に生きる名も無き人たちの姿を見いだしたのだろうか。遺品を前に、小石に託した正造の気持ちに想いをはせた。学芸員の説明によると、支援者の家には今も正造から受け取った小石が大事に保管されているそうである。







2013年10月20日日曜日

萩原富士夫ソロダンス☆2013終了しました!

萩原富士夫ソロダンス☆2013
「ルクレティウスが書いているとおり映像が飛来する皮膜なら、
目の前のダンスはあなたの視覚に対する愛撫もしくは殴打に他ならない。」
先週の日曜日無事終了いたしました。
目撃してくださった皆さんありがとうございます。
音響・照明を担当してくれた矢尾伸哉さん。
受付及びインスタレーション協力のさそうすなおさん。お疲れ様でした。
そして毎度毎度の私の無謀な試みを、暖かくそして厳しく見守ってくれたStudioGOOの吉福敦子さん、ありがとうございました。

終演後は様々な貴重な意見、感想をいただきました。興味深いことは同じ事象に対して真逆の見方が成立していたことです。作品の善し悪しはぬきにして、ダンスが自分の身体から離れてメディアとして機能したことを実感しました。

白いつなぎや防塵マスクからフクシマのことを想起した人は、少なくありませんでした。
実はキューピー人形とバラの花以外は私が日頃現場で使用しているものです。
空間構成に使用したビニールフィルムはオフィスの改修工事での空調機や天井の撤去の際、間仕切り養生に使っているものです。ピンクの防塵マスクはアスベスト含有物を撤去する際に使用します。それらは私の労働身体を構成している要素なのです。なんら特殊なことでは無く、東京のどこかのオフィスビルの改修工事で使われている物を、場所とコンテキスト変えて使用するだけでまったく違うメッセージを発するのは不思議なことです。

 あと、劇場には魔が棲んでいるのですね。上演ではルクレティウスのテキストを、キューピー人形に読んで聞かせて、それをライブ録音し、それをアンプをとおして再生したり、リベルタンゴを流してダンスしたのですが、2日目はそれらの音源であるノートパソコンが上演中にまさかのフリーズしてしまい、終始無音で踊りました。てっきり私はオペレーターの矢尾さんが「音に頼るな、無音で踊れ!!」と即興で難問を突きつけてきたのだと誤解。
「ならばいっちょうやったるぜ!!!!!」と言う気概で発憤。じっくり踊ることができて濃厚な時間となりました。終演後トラブルだと知り唖然。だって矢尾さんは表情を全く変えず冷静に私を見ていたのです。まあ結果オーライで、一つの作品が二度おいしくなりました。
一日目はコンセプトと構造の提示。2日目は身体の提示とでもいいましょうか。そして不思議なことに終演後は音が出ました。リベルタンゴを聴きながら撤収作業しました。

以下の写真は矢尾伸哉さんが照明・音響の合間に撮影してくれたものです。


                  

                                            
                                           
                                                                                                

       
                             
                     
   
    
                                                           




2013年10月1日火曜日

ソロダンス告知他

9月22日(日曜日)蒲田にあるバー、Studio80でダンスをした。以下はその様子。


ZIZAIKANという即興を探求する連続イベントの一つ。今回はギターとダンスの完全即興。3組登場。私はZIZAIKAN主催者のSEIDOさんと組むことに。SEIDOさんとは、黒沢美香企画で何回か共演しているのだが今回のようにがっちり組んだのは初めて。しかも最近はかつてのように即興を中心にしたダンスはしていないので、ちょっと新鮮な気持ちで場に臨んだ。ダンスするまえに自分に釘を刺しておいたことがある。記憶の反復、手癖、カラダ癖(?)の羅列にならにようにしよう、場所に立ちながら自分の引き出しの中だけを、探し回ることだけは止めようと思ったのだが、これがなかなか難しいことだった。そしてそれは音との関係にも当てはまる。音楽が成立する次元と、ダンスが成立する次元は、はなっから異なるのだと、その差異を安易に肯定して自分の身体に籠城するのもダメだ。音を聞く身体と、ダンスする身体の差異を最後まで意識しようとした。身体の中の様々な差異が生み出す力の流れを動きにしようと七転八倒。興奮していたのだろうな。微細な流れを拾いきれなかった。反省。そして久しぶりに他者と切り結ぶ機会を与えてくれたSEIDOさんに感謝!

さて今年もソロダンスを上演します。
去年は世阿弥のテキストからダンスを立ち上げることを試みましたが、今回は古代ローマの哲学者ルクレティウスのテキストをもとにダンスを試みます。


萩原富士夫ソロダンス☆2013
「ルクレティウスが書いているとおり映像が飛来する皮膜なら、
目の前のダンスはあなたの視覚に対する愛撫もしくは殴打に他ならない。」
10月12日(土曜日)19:00
10月13日(日曜日)17:00 両日とも30分前開場。料金 予約1,000円 当日1,500円
場所 Studio GOO 世田谷区粕谷4-7-19 
予約・問い合わせは萩原まで fujioh3776@以下Gメールで。
よろしくお願いします!!!



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